琉球大学 大学院医学研究科 先進医療創成科学
  教授

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腸内細菌叢、がん免疫、代謝の視点からの生体内ネットワーク解析と創薬開発

 新型コロナウイルス感染症に対する mRNA ワクチンの成功により、「mRNA」という言葉が一般市民にまで浸透しました。私たちは、この「mRNA」に注目し、難治がんの超早期治療につながる研究を行っています。生命の設計図であるDNAに記載された遺伝情報は、mRNAに写し取られ(転写)、mRNAを設計図としてタンパク質が作られます(翻訳)(図1)。近年、mRNAが転写されてから、翻訳されるまでの過程である「転写後プロセス」が、様々な生命現象のなかできわめて大きな役割を果たしていることが明らかとなり、新たな創薬標的として注目されつつあります。転写後プロセスの制御機構のなかで、最も解析が進んでいるものの一つが、私たちが中心となってその分子機構を解明したmRNA監視機構です。mRNA監視機構は、mRNA翻訳が途中で止まってしまう遺伝子変異を持つmRNAを監視し、積極的に分解排除します。実際、がん細胞における遺伝子変異により生み出される「がん抗原」をコードするmRNAは、通常mRNA監視機構が分解排除しています。そのため、mRNA監視機構を阻害することで「がん抗原」の発現を誘導することができます(図2)。私たちは、mRNA監視機構阻害剤を開発することで、がん免疫療法の治療効果促進を目指しています。